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伝統的構法の家

自然素材による伝統工法での家づくりにも取組んでいます。伝統工法と言っても何もかもが昔のままな訳ではなく、それは変化しつつ伝統として伝わって来たと思います。であるならばこれからも変化しつつ伝わっていくと思います。そこで伝統的構法の家と呼ぶことにしました。基本は環境負荷が小さく住む人にも優しい素直な家づくりです。家の骨格となる架構は木そのものを扱うために無理が利きませんが、代わりに理に適った美しさを現し、その空間は違和感のない心地よさがあります。個々に求められる耐震性や断熱性には土壁にしない工法もあります。伝統的な価値を守りつつ材料(工法)や性能とコストのバランスを考えていきたいと思います。

木でつくる家

古民家に見られる伝統工法も、金物を併用した現代工法も共に木造軸組工法です。木造軸組工法というのは木の棒を組む工法のことで日本では標準的な木造住宅の工法であり、材料となる木は全国どこでも手に入ります。家を建てるために立ち木を伐採し葉枯らし天然乾燥という贅沢な方法も時間さえあれば出来るのですから採用しない手はありません。ですが私達は山林が目に入る環境で生活しているのにそれを知りません。グローバール経済の中ではより効率的な方法が選択され、各々が情報を他人任せにした結果、生産と消費が乖離してしまいました。しかしスローフード、スローライフという言葉が出来たときにひとつの転換があったと思います。木でつくる家というのは材料の話ではなく造り様だと気づきます。同じ木の家でも国ごとに地域ごとに違いがあり、それは人であり道具であり環境であり歴史であるということです。日本の伝統工法の家もそのひとつに違いありません。

居心地のよい家

伝統的構法の家に入ると不思議と居心地の良さを感じます。私は両親の実家が農家だったので体験によるものかと思いましたが、そういう体験のない人でも同じのようです。それは伝統的構法の家を建てて住んでいる人に聞くとわかります。

理由は良く分りませんが建築中の現場に入っても同じ感じがします。森林浴というような樹木が発散する物質がリラックス効果を与えているのでしょうか。不安定な状態が和らいだときに人は居心地の良さを感じると言います。人が環境といういくつかの層に段階的に包まれているとすると家もそのひとつですが、伝統構法の家は人を和ませる空間作りなのかも知れません。

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ゴミにしない家

技術的な伝統的構法に対する興味は、移築・再生がし易いということ。工法としては建てることよりも解体することに目が付きました。家は解体すればゴミが出ますが、伝統的構法の家は極力これを減らすことが出来るし、再利用できないものは土に還るものです。

反面現代の家づくりはゴミ作りでもあります。リサイクルの技術も発達していますが最後は埋立て処分場行きです。処分場は維持管理が必要ですから“埋めれば終わり”ではないことが分ります。自然の終わりが土に還ることとすれば、土に還らない物には終わりがありません。

昔の大工さんは家を壊すときに「家を解く」と言いました。造った逆の手順を踏んで利用できるものは利用するということだったのでしょう。それが出来たのも伝統工法の家であればこそだと思います。

dscn0716.jpg処理し難い石膏ボード dscn0721.jpg石膏ボードの山 dscn0723.jpg建築廃材の分別 dscn0733.jpg住宅外装材 dscn0742.jpg屋根瓦(再利用できるが) dscn0747.jpg解体木材 dscn0749.jpg木材と金物の分離 dscn0752.jpg処理できない廃材(埋立処分場)

長生きな家

長生きな家は経済的な家造りと言えます。伝統工法で造るというと特別なことをしているようですが、昔の民家は近くの山の木を伐って伝統工法で建てられていましたから実は普通のことで、一番経済的な方法だったはずです。そして木組みの技術を用いて造られますから解くことが可能です。解くことが可能と言うことは移築したり再生したり、部材の再利用ができるということです。これは現代においても有用なものです。しかしそれには技術の継承が必要で、建築技術のみならず材料の生産地である山へつながっています。環境問題は地球規模で人類の問題になりました。自然の材料を生かす伝統工法で家を造ることは自然環境を維持することにもなります。これは持続可能な社会へのひとつの回答です。防火規定のある都市部では難しい面もありますが、それ以外の地区では優先的な選択肢のひとつになります。そして伝統的構法による長生きな家を建てることは、社会や自然との共生を感じることになります。

※本中のスライドは見学写真です。